「残酷かもしれないけど・・・
20代のうちは、悩むものなのよ。
だから、私は、決して20代に戻りたいとは思わないわ。」
彼女はそういって、笑った。
僕は、礼を言って彼女の研究室を出た。
いまは、もっとselfishでいてもいいんじゃない?
たしかにそうかもしれない。
研究室を出て、エレベーターに向かいながら、僕は考えた。
なぜか、少し心が軽くなって、僕は、ビルの10階のフロアの上で、
一回、右足を振り上げてみた。水溜りをけって、水を飛び散らすみたいに。
ゲーテのファウストを読んでいる。
なかなか読み終わらないんだけど、読んでて本当にすごいと思うのは、
ファウストには、人間の普遍性があるということだと思う。
だから、僕は筋どおり、心を痛めたりできる。
大丈夫。ちょっとづつましになってるって、信じてみる。
ピアニストの友人は、先週サンフランシスコに帰った。
また、彼に会うまでの1年が始まった。