磐梯熱海で元湯に浸かってから、猪苗代に着くころには、日も落ちて、丸いお月様が輝いていた。
2013年の中秋の名月の前の夜、待宵月に、私は、会津の猪苗代湖のほとりにいた。
すぐ近くには、会津磐梯山がみえる。
磐梯山の姿は、堂々としていて、はじめてみた時から、とても気にいった。好きになってしまった。
その磐梯山の山影と、丸い月夜なのだ。今夜は湖畔で眠ろう、きっと素晴らしいはずだ、と感じた。
湖畔での風景は想像を越えて美しかった。天神浜には、誰一人おらず、遠く磐梯山の足元に小さな町の光がみえた。
一人で少しの時間、月をみつめてみた。月はまさに光っていて、大きな宝石のようだった。月影はうさぎのようにはっきりみえた。
静かな、美しいときだった。
人間の悩みや、社会の混乱をこえて、月や星々は、山や湖は共に唄っていた。
そういう静かな、美しいときだった。
朝目覚めて、湖畔にいった。
美しい土地だ。
古から続く美しい土地だ。
空は青く、湖の水は清かだった。
遠くの町は霧の中にあるようだった。