大内山で目覚める。
これが、朝の風か。
スナフキンがいつも感じているのは、こういう風なのか。
季節の変わり目を感じさせてくれる風が、通り抜けて、僕の顔をなでていく。
今日は、まずツヅラト峠を越えて、紀伊長島へ行くんだ。
木立の中をゆく。
隣に川がゆく。
今とは全然違った、
道の在り方、川の在り方が、太古からあった。
ツヅラト峠を境に、伊勢から熊野に入ると伊勢路ではいわれている。
峠を登り終えると
はじめてみえる補陀落の海。
対岸がみえない海。
永遠は近くにあり、感じる心という鍵があれば、その扉はすぐ開かれる。
風が気持ちいい。
人間のほんとうの姿は、風と共に在れるほど、自由だ。
「伊勢を越えた向こうに、神仏の世界がある」
地図がない時代だ。
世界が球体であることも知らない。
その気持ちで、このツヅラト峠からの景色をみたら、海はすばらしく輝いてみえたろう。
風と一体に。
風を感じて、心に風を吹かせて、峠を下り、紀伊長島のうおまちを目指す。