「自己を守っての、創造はなく、また救済はありません」
マチャバはつぶやいた。
清水博先生のことばだ。
今夜は、やけにそのことばが響く。
夜は急に寒さを深め、町の雨は雪になった。
街頭も、電話Boxも雪に包まれている。
マチャバは歩いているのだ。 雪の中を。
銭湯でみたテレビの中のニュースキャスターが言っていた。
「この国はどういう枠組みになっていくのか、ビジョンがないんです」
変化していきたい、とマチャバは想う。
「ここまで来た世の中だからこそ、志を持って生きて生きたい」
もう旧くなった手帳に、なんども赤いペンで書き付けていた。
なんども、なんども。
「志」
こころざし。
銭湯で、ゆっくり、心臓の鳴る音を聞いてみた。
そのものになってみた。
心臓の鳴る音になってみた。
「生きている」
生きているなら、「生きて」いたい。
「出すべき波動は希望である」
昔、年始のビールを開けながら、古い仲間と辿りついた、貴重なテーゼ。
それは、最高の一滴みたいに、ずっと胸にある。
今夜はふぶく