第十話 ふぶき


「自己を守っての、創造はなく、また救済はありません」




マチャバはつぶやいた。

清水博先生のことばだ。

今夜は、やけにそのことばが響く。


夜は急に寒さを深め、町の雨は雪になった。

街頭も、電話Boxも雪に包まれている。

マチャバは歩いているのだ。 雪の中を。


銭湯でみたテレビの中のニュースキャスターが言っていた。

「この国はどういう枠組みになっていくのか、ビジョンがないんです」



変化していきたい、とマチャバは想う。


「ここまで来た世の中だからこそ、志を持って生きて生きたい」

もう旧くなった手帳に、なんども赤いペンで書き付けていた。

なんども、なんども。


「志」

こころざし。


銭湯で、ゆっくり、心臓の鳴る音を聞いてみた。

そのものになってみた。

心臓の鳴る音になってみた。


「生きている」


生きているなら、「生きて」いたい。



「出すべき波動は希望である」

昔、年始のビールを開けながら、古い仲間と辿りついた、貴重なテーゼ。

それは、最高の一滴みたいに、ずっと胸にある。


今夜はふぶく
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by kkiyono-lp | 2008-02-13 00:10 | 2008年 72の物語
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