『葉脈の構造』



川が見える席にすわって

今年最後になるだろう、アイスコーヒーを飲んでいるんだ。


空が秋になったな。

雲が、軽くなったな。



窓から見える川。

その脇には木が生えている。

水面は海に近いから、押したり、引いたりするようで、

うつった白い壁の建物を、モザイクみたいに溶かして、揺らす。


手には、昔懐かしい本がある。

ビルの二階の素敵なカフェの棚で見つけた。

前に読んだのは、九州だったっけ。


題名は 『葉脈の構造』

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あるまちがあって、

そこのまちの人は、

絵描きの女の子が発見した葉脈の構造の話でもちきり。


たくさんの人がたくさんの葉脈の構造についての意見をもってた。


「この葉脈の中を流れているのは水じゃなくて、大地の涙だ」


「葉脈はとんぼたちには、虹色にみえているんだと、母方のじいちゃんがいってた」


「これじゃ、葉っぱの先端から水が流れているのか、茎から流れているのかわかりませんな」



そんなまちの人々のお話を聞いていた、旅人が連れてきた一羽の鶏が、

すっと、背筋を伸ばして立ち上がり、土手の一番大きな石の上に威厳を持って上り、

こういったんだ。

「すべては、一枚の葉の中にある!」

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この本はそういう話だ。

なかなか素晴らしい本だ。

とても大切なお話だ。



夏の暑い日に、葉の陰に隠れながら、

触角をつかって、お話をする蟻のことを、想っていた。



川は、きらきら、鳴いた。


逢いたい人に逢い

ちょっとでも心に触れれるなら

きらきらした目に逢えるなら、映るなら。



川は、きらきら、鳴いた。


もっと触れていたい。



今晩も、命の光が、そこらで光る。

あるものは鳴き、あるものは笑い、

この宇宙の広い無限な闇の中で、

一本旗をたてるように、命の光があることを、うなづく。

「このあたたかさだ。」


「僕は旅人だったのかもしれない。

 そのように世界を見ていた。

 そのようにまちを歩いていた。

 旅の終わりは」




旅人は、自分では旅人と気づかない。


自分のなかにある小さな波。

静かな池に、小石を投げたら、いったいどうなる?



(つづく)
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by kkiyono-lp | 2007-09-25 18:10 | Story telling
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