曽根次郎坂・太郎坂の甫母峠。
その峠あたりが、楯見ヶ丘。
山から海を臨む。
海は、母。
山は、父。
二木島の里に一度下り。
二木島峠、逢神峠へ。
逢神峠は、熊野の神と伊勢の神が出逢う峠という由来がある。
徐福の宮がある波田須をこえて、日が暮れる。
結局、夕暮れまでに、
全ての峠は越えられず、
大吹峠・松本峠は、闇の中すすむこととなった。
闇の中で、峠をのぼりはじめ、峠をこえて、闇の下り坂を降りていく。
足元をヘッドライトで照らしながら。
こういう経験をするとは思っていなかったが、
思いの他、身体は軽く、闇と一体化していくようにさえ思えた。
闇が持っている温かい力を知った。
この経験がなかったら、僕はいつこの感覚を感じることができただろうか。
一人で闇の峠を越えること。
それは言葉にすれば単純だが、
いままで「冒険」が不足していただろう僕には、十分なGIFTだった。
ついに熊野市駅周辺につく。
銭湯が開いていて、ほんとうに有り難かった。
身体の疲れをおとす、とはまさにこのこと。
ゆっくりお湯を悦びながら浸かる。
そして、
ずっと胸にいだいていた、花の窟につく。
闇の中。
ここまで来たんだ、という実感につつまれた。